• 2023年6月1日

賃貸住宅の保証人制度について

最終更新日 2023年4月27日 by rradiatordir

全保連が考える保証人のあり方

保証人とは、さまざまな種類の契約によって債権者に対する債務を負っている本人がその債務を履行しない場合について、本人に代わって債務を弁済するための法律上の責任を持っている人のことを指しています。

アパートやマンション、一戸建て住宅といった物件の種類を問わず、わが国では賃貸住宅に入居する場合にも、本人の家族や親族などで定職に就いていて比較的資力がある人を選んでこうした役割を負ってもらい、物件の賃貸借契約書のなかにも本人とともに署名捺印させて、その責任をあきらかにすることが慣習的に広く行われています。

この場合は実際には連帯保証人とよばれているもので、債務に関しては本人と同様の法律上の責任があるところが特殊です。

全保連より引用

たとえば不動産会社の仲介のもとで本人が賃貸マンションの大家と入居の契約を交わした場合を例にとれば、本人が故意や過失によってそのマンションの居室内の設備を壊してしまったり、または契約で定められている毎月の家賃を支払わずに長期にわたって滞納してしまった場合には、当然ですが、居室の修理のための費用を大家に対して弁償したり、滞納分の家賃を支払ったりする法律上の責任が生じます。

このような債務は本来であれば本人がすべて負うべきものであって、単なる保証人の場合には、大家から直接的な金額の請求があったとしても、まずは本人に対して請求するように大家に申し出たり、本人の資力がある間は代わって支払いをすることを拒否したりする法律上の権利が認められています。

これらは抗弁権とよばれる権利であって、その権利を行使された以上は、大家の側でも法律にのっとり従わざるを得ないものです。

抗弁権がない?

ところが一般的なアパートやマンションなどの賃貸住宅の契約において適用されている連帯保証人の場合には、このような抗弁権がないのが特徴となっています。

具体的には抗弁権がないことを当初の契約のなかですでに条文中に明記するかたちとなっているのが普通です。
抗弁権がない以上は、マンションやアパートの大家も支払いの意思や能力があるかどうかわからない契約者本人よりも、むしろ連帯保証人のほうにしかるべき金額を請求して、損害のあった分の取り立てを行ったほうが合理的と考えるのはごく自然なことです。

そのため連帯保証人になってしまった場合には、何かトラブルがあれば有無をいわさず大家が請求してきた金額の支払いを求められてしまい、場合によっては金額が大きすぎて自己破産をせざるを得ないなどの、悲惨な目に遭ってしまうケースも少なくはありませんでした。

民法の大幅な改正が行われた

実はこうしたケースが社会問題としてもクローズアップされたことから、現在では国会における慎重審議を経て、大元の制度を定めている民法の大幅な改正が行われています。

その内容についてですが、従来のありかたとは大きく異なり、あらかじめ負担すべき債務の上限の金額を定めておき、その範囲内でしか責任を負わなくてもよいようにするというものです。
そのため際限なく本人になり代わって債務を弁済する義務が発生して自己破産などに陥ってしまうケースは、今後はほとんど消滅するものと期待されています。

ほかにもこれまで本人の家族や親族などの個人に求めていたのと同様の役割を全保連などの専門の保証会社が果たす制度を採用する賃貸住宅も多くなっているのが最近の特徴です。

本人に代わって大家に対して債務を弁済する

この保証会社というのは、入居の際の本人の審査もあわせて担当し、家賃などとあわせて一定の保証料を徴収する代わりに、何らかのトラブルがあったとしても、大家が損失をこうむらないようにするために、本人に代わって大家に対して債務を弁済するサービスを提供する会社のことをいいます。

保証料の部分だけ家賃も周辺物件の相場にくらべて若干高くなることが多いといえますが、わざわざ親戚などに頭を下げて依頼をする必要がないため、入居を希望する人にとってもメリットは大きなものがあります。

アパートやマンションなどの物件の大家の側でも、トラブル時の支払いが確実な保証会社とタッグを組んだほうが何かとメリットが大きいのはもちろんのことです。
このようにさまざまなステークホルダーの利害が一致するところから、保証会社が契約に関与する割合は増えてきており、今後ともビジネスチャンスのひとつと捉えて新規参入が進むことが見込まれています。

火災保険も強制的に加入させる

従来からも行われていますが、これらに加えて入居時に火災保険などの契約をあわせて行わせ、契約をしない場合は入居を認めないことも、似たようなリスクマネジメントの一環といえます。

火災保険については建物全体の契約は大家のほうで、個別の居室や家財についての契約は入居者本人のほうで分担するのが普通です。
火災保険とはいっても漏水などのケースも対象に含まれていますので、入居者が大家に対して原状回復の責任を負うようなトラブルがあった場合でも、このような保険の契約をあらかじめしていれば、保険金のなかで手当てされるため、損害が弁償されないリスクは回避できます。